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「緊迫するウクライナ情勢 プーチン大統領の思惑」について、FNNモスクワ支局・関根弘貴支局長がお伝えします。

ロシアは、隣国ウクライナのNATO(北大西洋条約機構)への加盟をめぐり、アメリカなど西側諸国への非難を続け、軍事的緊張が高まっています。

互いに出す情報も真っ向から対立する中、世界がプーチン大統領の動向に注目しています。

ポイントは、「ロシアは侵攻する? しない?」です。

FNNモスクワ支局・関根支局長「連日ニュースになり、ロシアがいつ軍事侵攻してもおかしくないと言われるウクライナ情勢ですが、今、何が起きているかというと、大量のロシア軍がウクライナとの国境に集まり、3方向を囲んでいるんです。その数は、なんと15万人とされています。これは、ロシアの兵力の半分近くに当たるんです。特にロシアが同盟国のベラルーシとウクライナ周辺で行っている合同演習は異例でした。いつもはウクライナ近くにある部隊だけで演習を行いますが、今回は、およそ9000km以上離れた極東から最新兵器を運び入れるなどしたんです。アメリカのバイデン大統領は17日、『ロシアによるウクライナ侵攻の脅威は非常に高い。あらゆる兆候が侵攻準備を示している』と発言。数日以内に侵攻の可能性があると警戒感を示した。しかしロシア側は、『自分たちの領土で演習することがなぜいけないのか。われわれはウクライナを脅かしたことは一度もない』と言い張っています。さらにロシア国営テレビでも、専門家が『緊張の高まりはロシアのせいではない』と猛烈に反論しています」

ロシア国営テレビ・専門家A「われわれが見ているのは、(西側諸国の)下品なプロパガンダでしかない」
ロシア国営テレビ・専門家B「プーチン大統領が侵攻を決断していないにもかかわらず、ウクライナはヨーロッパの(国外退避などの)“ヒステリー”のせいで、(経済的に)倒れそうになっている」

FNNモスクワ支局・関根支局長「ただ意外なことに、世界的なニュースになっているウクライナ情勢について、ロシア国民はあまり興味がないんです。わたしの友人を含めて、最近までこの事態を全く知らなかった人さえいます。もともとロシア人は楽観的で、アメリカなどが勝手に騒いでいるだけだという政府の説明を信じていて、戦争などになるのはあり得ないと考えている人が多いんです。それよりも話題になっているのは、フィギュアスケートのワリエワ選手のドーピング問題です。ロシアの各地の街中に『わたしたちはあなたと共に』という伝統的な応援メッセージが掲げられています。そして17日は、ロシアオリンピック委員会の選手が金・銀、ワリエワ選手はまさかの4位となりましたが、ロシア国営テレビは、ウクライナ情勢よりもフィギュアを手厚く扱いました」

加藤綾子キャスター「そうだったんですね。もっと緊迫しているのかと思っていたんですが。そもそもプーチン大統領の狙いって何でしょうか?」

FNNモスクワ支局・関根支局長「それをひもとくための映像をご覧ください。皆さんも一度はご覧になったことがあるかと思います。筋肉豊かな上半身をあらわにしたプーチン大統領です。上半身裸で馬に乗る姿や魚釣りを楽しむ姿。さらには川でバタフライをする様子など、スポーツマンとしての一面も見せながら、『わたしは何でもできるんだ』という強さを前面に出すイメージ戦略をとることで、人気を集めました。実は、プーチン大統領の支持率はピーク時よりも低下していて、国内での求心力を維持するために、あらためて強さをアピールする必要に迫られています。強い大統領・強いロシアを維持するため、ウクライナ情勢では負けられないんです。東西冷戦の終了後、もともとロシア寄りだった国々が、続々とアメリカが中心のNATO(北大西洋条約機構)に加盟し、ロシアは周りを囲まれてしまいました。そして、ウクライナがNATOに入ってしまうと、国境がNATOとじかに接してしまいます。さらにウクライナにロシアに向けたミサイルが配備されれば、発射後わずか5分でモスクワに達するという脅威にさらされます。このため、ロシアにとっては、ウクライナのNATO入りは絶対に許せない一線で、プーチン大統領もこれを絶対に阻止する姿勢を示す必要があるんです」

加藤キャスター「阻止する姿勢は見えますけど、実際にウクライナに軍事侵攻することまでは考えていないってことですか?」

FNNモスクワ支局・関根支局長「実は、そこがとても微妙なところなんです。プーチン大統領は最近、こんな発言を繰り返しています」

プーチン大統領(7日)「(戦争に)勝者はいない。そんなことはしたくない」
プーチン大統領(15日)「戦争はしたくない」

FNNモスクワ支局・関根支局長「このように『戦争はしたくない』と対話路線を打ち出しているんですが、信頼できるのかどうかは、なんとも言えません。実は2014年には、ウクライナの一部だったクリミア半島を強引に併合してしまった過去もあります。ロシアは16日から、ウクライナ国境で軍事演習していた部隊の一部を撤収させ始める動画を、公開し始めました。ただ撤収させた部隊の規模などは明らかにしていません。緊張緩和に向けて対応していることをアピールし、アメリカの出方をうかがっているだけとの見方もあります。これに対し、アメリカ政府の高官は『撤退は確認できていない。うそだ』と主張し、むしろ周辺のロシア軍は増強されていると警戒しています。アメリカが軍事侵攻を防ぐカードとしているのが、経済制裁です。制裁として、ドル取引が停止されると、ロシアで展開しているアメリカ企業などの営業がストップする可能性があります。特にマクドナルドなどのファストフード店は、ロシアでも人気があり、閉まれば国民から反感を買ってしまいます。北京オリンピックが閉幕する来週以降、米ロが折り合いをつけられるのか、はたまた軍事的な緊張が続いてしまうのか、最終的には、プーチン・バイデン両大統領の直接交渉にかかっています」

加藤キャスター「関根さんどうもありがとうございました。ロシア国内、落ち着いているというのも驚きだったんですが、ロシアとアメリカの発言や動き、今後も注意深く見ていかないといけないですね」

明治大学・齋藤孝教授「額面通りに言葉って受け取れないんですよね。両首脳の言う言葉は、全部、交渉の材料だと思うんです。相手の利益をどれだけ自分のほうに持ってこれるかとか、選択肢を用意させて譲歩を狙っているというのがありますね。ウクライナをNATOに入れさせない、入れないっていう言質をアメリカから引き出したいんだと思いますが、言葉1つ1つが、弾を実際に撃ち合う前の実際の“肉弾戦”というか、そういうものの前に、言葉での応酬があるんですよね」

加藤キャスター「言葉で距離を測って戦っていると」

明治大学・齋藤教授「1つ1つの発言によって、相手の心の中を揺さぶっているという状況だと思います」

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