世界各地の街角の話題や最新ニュースをお伝えするキャッチ・ザ・ワールドです。16年続いたドイツのメルケル政権が、まもなく幕を下ろします。転機となったのが2015年、大量の難民を受け入れた、いわゆる「難民危機」。当事者たちは何を思うのでしょうか。パリ支局・富永高史記者の報告です。

 ベルリンに住むアナス・モダマニさん(24)。ジャーナリストを目指す大学生です。1枚の写真を大切にしています。メルケル首相と撮った写真です。

シリア難民 アナス・モダマニさん
 「メルケル首相がいなければ、人生は変わっていたでしょう。死んだか、トルコかシリアに戻ることになったと思います」

 2015年、紛争が続く中東、アフリカからヨーロッパに難民が押し寄せ、ドイツは100万人以上を受け入れました。シリア出身のモダマニさんもその1人。ゴムボートで海を渡るなどして18歳の時にドイツに来ました。

 当時、難民を積極的に受け入れ、自ら施設に足を運び、声をかけていたのが、メルケル首相です。写真は、その時に撮ったものでした。

シリア難民 アナス・モダマニさん
 「(メルケル首相は)『難民を受け入れる。彼らに生きるチャンスを与える』と言いました。一生、メルケル首相に感謝します。彼女は正しい判断をしたのです」

 しかし、この政策は、メルケル政治の大きな転換点にもなりました。ドイツ初の女性首相となったメルケル氏。危機に直面した時ほど能力を発揮し、ドイツのみならずヨーロッパをリードする存在となりました。しかし、難民申請中の男らが女性に性的暴行をするなど犯罪が度々起き、国民からは反発の声も。

ドイツ メルケル首相
 「困った人を助けたことで責められるとしたら、それは私の知っているドイツではない」

 そして、総選挙では極右政党の躍進を許し、地方選挙ではメルケル氏が率いる与党の負けが続いたため、政界引退を決断するに至ったのです。

 メルケル首相を高く評価する専門家も、”これほどの難民が来るとは予想しなかったのではないか”と話します。

政治学者 エマヌエル・リヒター教授
 「(大量の難民は)ドイツの社会的、政治的平和を脅かすものでした。それを、極右政党はすぐに利用したのです」

 ドイツでごく普通の暮らしを手にしたモダマニさんですが、メルケル首相と撮った写真が世に出回り、「テロリストだ」と嘘のうわさを流されたこともあるといいます。

シリア難民 アナス・モダマニさん
 「メルケル首相が辞めたらどうなるか心配です。(シリアに)戻らなければならないのでしょうか、この社会にうまく溶け込んでいるのに」

 社会民主党が第一党となった9月末の連邦議会選挙。ただ、政権をとるには連立が必要となり、ドイツの方向性は不透明です。

 モダマニさんはこう願っています。

シリア難民 アナス・モダマニさん
 「本当に保護を必要としている人に、ドイツに来て、自分の将来、より良い将来が持てるようなチャンスが与えられるといいと思います」
(10日04:33)

#難民危機 #メルケル首相 #シリア難民 #難民

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